建築設計と外構設計を同時に行う効果
■建築設計と外構設計を分けることで発生するコスト
新築やリフォームでは建物が完成してから庭や外構の設計を行う場合が多いです。このような流れで相談いただいた場合に大抵無駄なコストが発生してしまいます。これがなければ建物や庭をもっと良くしたり、他のことにお金を使うこともできるのにともったいなく感じています。
どういった「無駄」かというと二重工事や設計への制約です。例えば建築工事の際に外構部をコンクリートや砂利で覆うことが多いですが、見た目や快適性に不満を持たれる方も多く撤去工事が発生しがちです。設置したフェンスがあまり効果的でないために新たに設ける必要がある場合もあります。地中配管が造園設計の制約になることもあります。
これらのことは建築設計段階から外構部も設計しておけ ば避けられます。設備類の簡略化や工事を一括化といった合理化でコストの削減にもなります。
■「住まい」の環境は建築と外構からつくられる
外構素材の性能特性や木が持つ景観向上機能、空調機能、遮蔽機能など複合的な設備機能をあらかじめ考慮すれば最小限の「造園」でも多くの役割を持たせることができます。建築の素材や配置、窓の取り方等で設計の自由度も高くなるはずです。
外構は建築と密接なもので「住まい」は家と庭のことを指すと言っていいと思います。住まいの環境は屋内と屋外の状況から作られます。建築と外構を分けて考えるのは、住んで感じる「改善点」を整理できるというメリットもあると思います。しかし、心地よい住まいをつくには、建築と外構を合わせて設計するメリットは大きいと感じます。
■建築と外構が「利用し合う関係」を作る
外構を良くするために建築から利用できるものはたくさんあります。それによって建築設備の設置コストや意匠への影響を減らすこともあると思います。
写真は集合住宅のリフォームの際に外構につくった小さな池です。ここには雨樋を水源として引き込んでいます。屋根は優れた集水装置で、植栽に引き込むと少ない雨でも効率的に水やりをしてくれます。他には室外機の水も1日つけると意外に量があって雨が少ない夏に貴重な灌水装置になります。
樋の水は小さなせせらぎとなってから池に注ぎます。池のオーバーフローは全て土壌に浸透して庭の草木を育みます。これは水やりの手間やコストを省くことにもなります。土や空気に湿度をもたらす池は植物の健康や人の快適性にも好影響があります。庭の表情も豊かになり、小鳥が水浴びする姿も見られるようになります。建築では「排水」でも外構の作り方次第では「資源」になります。
ここでは建築設計と共同することでアプローチから玄関土間まで断熱性や調湿性に優れるレンガで舗装し、機能性を高めるとともにつながりのある空間を作っています。建築と外構の「利用し合う関係」が強いほど合理的で魅力ある空間になります。