景観設計と「土づくり」

■「良い土」と植物生理

景観設計や造園において見落とされがちだと感じるのが、植物が根を張る「地中で起きていること」です。まず「植物にとってふかふかの土が良い土」とはよく言われますが、それはなぜでしょうか?見過ごされがちなのが「地中の酸素」です。これが植物の生存に重要な要素で、栄養分などは二の次です。「ふかふかの土」は土の粒子の間にたくさん空気を含んでいるのが良いのです。

植物は酸素を生み出す特別な生き物のように思われますが、実は人間ととてもよく似た性質をしていて、人間と同じように「呼吸」でエネルギーをつくり、生命を支えています。違うのは「エサ」で、簡単に言うと人は「有機物(動植物の遺骸)」、植物は「水と二酸化炭素」を食べます。酸素は植物の「排泄物」の1つですね。

全身で呼吸をする植物にとって、体の半分を占める根も大切な「呼吸器」です。酸素が足りなくなると、人と同じように苦しみ、衰弱し、やがて枯れてしまいます。

■「良い土」は自然の「水と空気」がつくる

グライ土壌。酸欠により青みを帯びてドブ臭い粘土。コンクリート密閉型土木により都市部だけでなく山間部でもよく見られるようになっている。

「土壌改良」は建築や造園土木でよく行われます。植栽を行う場合は「根腐れ」を起こす粘土を処分し、サラサラとした土に土壌を「交換」します。

土のゴミから土木、家庭の園芸まで一般的な手法です。この手法の短所はコストもそうですが、根本的な解決にならないことが多いことです。美しい景観は草木が健康であってこそですが、植物を育む土壌環境はどのようにつくられるのでしょうか。

簡単に言うと、土壌に降る雨水が地中に血管のような水脈を張り巡らせ、そこに空気が入り込むので自然に「通気性・保水性の良い土」ができるのです。雨で地表では表層を流れる水が集まり、やがて川になりますが、それ以外に多くの水が地中に浸み込みます。目には見えませんが、この浸み込んだ地下水も川と同じような姿の「水脈」をつくります。

水の流れは①低いところへ集まる②「出口」に向かって集まるという特性があります。崖下や扇状地の先端で湧水が多いのは、この高低差を下りきった斜面変換点が地下水脈の「出口」になるからです。ここを塞ぐと地中の水が停滞して酸欠土壌になり、植物が苦しみ始めます。

現代土木では河川や斜面をコンクリートで「密閉」する手法が主流ですが、これは「出口を塞ぐ」ことになっています。つまり、「出口」を塞いだまま土壌だけを交換しても、やがてまた酸欠土壌になってしまいます。

今の街で実は多くの草木が「苦しい」姿をしていますが、「密閉された地中構造」という根本的な問題による窒息が大きな原因であることは造園の現場からも感じます。

 

■「土づくり」は簡単にできる

土づくりは先述の「水と空気の作用」を応用すれば、土壌の入れ替えといった大掛かりな手間をかけずに合理的に行えます。写真は大学のキャンパス内に周辺住民と「里山」をつくるプロジェクトですが、ここでは広大なエリア参加者の手作業だけで強烈な酸欠土壌を短期間で改良し、衰退していた草木は息を吹き返してきました。

素掘りで穴と溝を掘ることで人工的に「落差」と「出口」をつくり、後は自然の力に任せただけです。材料は埋没の緩衝材として炭と、これも「ゴミ」とされる剪定枝や刈り草などです。数ヶ月後には腐敗臭のある青みのある重たい粘土(グライ土壌)が土色のサクッと掘れる軽い粘土に変わっていました。

場所によって仕様は変われど、こうした「ツボ」を抑える設計施工をすることで無駄なく美しい景観をつくっていくことができると考えています。

 

 

 

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