雑木の庭と植栽デザイン

■雑木の庭で気をつけること

人工物の割合が圧倒的に多くなった現代の都市で、自然を感じられる雑木は建築や街並みとの調和やメンテナンスコストが相対的に低いこともあって外構や庭に植えられることが増えてきました。

雑木の庭は住まいの魅力を高めてくれますが、注意すべき点もあります。秋の落ち葉のことや、暑さ、日差し、乾燥への耐性や成長する大きさやスピードなどの生育特性を考慮しなければ、せっかく植えても住む人の負担感やトラブルの原因にもなりえます。

植栽後衰弱している雑木もよく見ます。暑くて乾燥した都市部は木々には過酷な環境なので、それぞれの木に適した環境に植える、あるいは育つ環境をつくり出して植える必要があります。木が衰弱すれば庭の雰囲気が暗くなり、病虫害が目立つようになります。木が持つ「エアコン機能」も損なわれるなど様々なデメリットを生じます。

■植木の種類・性質と植栽デザイン

植栽デザインは「木の性質」と植栽後の「環境条件」をすり合わせて設計します。「木の性質」は、樹高(高木~低木)、日照の好み(陽樹~陰樹)、土壌湿度の好み、生育スピードなどです。これは木が自生する環境と相関します。「環境条件」は日照、地形、土壌の質などの生育環境の他、住まいの中でどのような役割を持つのかという機能条件、水やりや手入れの見込みなどの管理条件も含まれます。

■雑木の種類・性質と植栽デザイン

例えば「日照条件」に当てはめると以下のような樹種が考えられます。

・日なた(南向き、ひらけた場所)

 一日中日差しが強い場所では、「陽樹」でないと弱ってしまいます。雑木ではコナラ、クヌギ、ヤマザクラ、アカシデ、コブシ、針葉樹のアカマツなどがあります。これらの種類は乾燥にも強く、根付けば水やりも必要ないでしょう。ただし成長が早いため、大きさをコントロールする場合は年に一回の剪定は見込んだ方が良さそうです。特に成長の早いケヤキは狭い場所には不向きです。

 陽樹以外のものは、陽樹に寄り添うように植えると陽樹の木陰に守られるために生育できるようになります。これが生育環境を「作ってあげる」ということになります。日向は雑木以外でも生育に適した魅力的な木が多い場所でもあります。サルスベリや果樹類は雑木との相性も良いです。乾燥地原産のオリーブやアカシアは一味違う雰囲気が出ます。

陽樹が作る木陰によって、他の植物も健全に育つようになる。

 

・半日陰(東西向き、建物の間など)

 雑木では生育可能な樹種が最も多い場所です。陽樹の多くも生育可能で、他にアオダモ、カエデ類、シャラ、アオハダ、エゴなどが綺麗に見えます。ジューンベリーも雑木に馴染みます。

 よく日向におすすめと紹介されているものでも、実際には強い日差しで本来の美しさを損ねてしまう場合があります。ヤマボウシは葉が内側に丸まり、アオダモやシャラは特徴的な幹がくすんでしまいます。森の「亜高木層」になるこれらの木は「優しい日差し」が丁度良いようです。

・日当たりが悪い場所

半日も陽が当たらない場所では、雑木ではカエデ類、ヤマボウシ、ガマズミ類などの低木が可能でしょう。ツバキ類やモチノキ、カシ類などの常緑樹は暗さに強く、やわらかな姿に育ってくれます。ツガやマキといった針葉樹もしっとりとした独特の雰囲気があります。

 

 ここでは日照条件から樹種の候補を少し紹介しました。実際の設計では他の条件も含めて候補を絞り、その中から季節を通じた「演出」ができるような組み合わせを考えます。

 

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