雑木の「エアコン効果」を利用する造園設計

■「雑木」とは

「雑木」とは身近な山野に自生していて、建材としての利用価値が低かった主に落葉広葉樹のことを指して呼んだもので、「雑草」と対のものですが、近年の「雑木の庭」の流行もあり「オシャレ」とか「爽やか」といった良いイメージのものとして抜け駆けた感があります。

雑木の特徴は「落葉樹」であることです。日本庭園では主にマツやモチノキといった「常緑樹」を重用してきました。「落葉樹」は冬に葉を落とす木で、「常緑樹」は冬でも青々と葉を茂らせている木です。雑木は常緑樹よりも葉が薄くて色が明るいので、雰囲気として明るく爽やかな印象になります。

花は地味なものが多いですが、幹肌、芽や葉の色形、紅葉の色などそれぞれに特徴を持っています。また冬枯れから芽吹き、新緑から徐々に深まって紅葉と表情を変え続けます。季節を通じて変化と色彩に富んだ景色と明るい雰囲気は雑木ならではの魅力です。一方、秋にまとまって落ち葉が出る点は考慮しなければいけません。

また「雑木」とひとくくりにされていても、暑さ、日差し、乾燥への耐性や成長するスピードや大きさなどの生育特性も様々です。雑木は住まいの魅力を高めてくれますが、雑木の庭をつくる際はこうした点をふまえて植栽デザインをすることがとても重要です。

 

■雑木は高機能エアコン

「雑木」が優れているのは見た目だけでなく、人の住まいの快適性を高める「住宅設備」としての性能です。猛暑日でも木陰は驚くほど涼しいです。

また、木陰と日向との温度差から微風が生まれさらに体感温度が下がります。葉から水分を蒸散して空中湿度も調整してくれます。健康な木が生命活動をすることで生まれる微気象はエアコンと同じような効果があります。

しかも部屋を冷やす代わりに外気を暑くしてしまう冷房と違い、木は部屋も外気も冷やし、成長するほど機能が高まります。つまり経年で「商品価値」が高まっていくという高機能さです。

中でも「雑木」は、夏に木陰をつくり冬に落葉して暖かな日差しを取り込むため、より人に優しいと言えます。快適な住まいの設計の基本は「暑さ」への対処といいますが、雑木はうまく取り入れれば非常に有効です。

■住まいを快適にする庭や外構の設計

「森林はわれわれのふるさとの最も美しい衣服である」は、ドイツの学者が森の塵埃の濾過や地下水の浄化作用を評した言葉ですが、樹木のエアコン機能をもって「庭は建築の衣服」にできるかどうかは庭の設計にかかっています。例えば、建物際に落葉樹の高木を配置すると直射日光を防いで室内の温度上昇を抑えつつ窓から心地よい風が抜けるようになります。同時に窓からの景色に奥行きと彩りをもたらします。町家や長屋に必ずと言っていいほど設けられている坪庭もこの気温差から生まれる風をつくるための「設備」です。常緑樹は外からの目隠しに向き、防火、防音、防塵、防風といった「住まいを守る」機能が高く落ち葉の飛散も防いでくれるので敷地の外側に配置すると効果的な場合が多いです。

 

このように、必要な機能と植物の特性が合致するような植栽デザインを行うことで、庭や外構はただの「飾り」ではなく、住まいの魅力を高める上でとてもコストパフォーマンスの高い手段になると考えています。

 

 

 

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