造園の常識と実際の植物生理

 

 造園やガーデニングでの常識が植物生理的に見ると必ずしも当てはまらないことはたくさんあります。本やインターネットでは様々な知識が載っていますが、植物生理を知ると理解が深まったりより良い手入れが考えられたりします。

 一例として庭木の代表種であるマツとモミジについて少し詳しく見てみます。

■「造園の常識」と実際のマツとモミジの性質

渓流沿いのイロハモミジ

 造園業界でマツは乾燥、モミジは湿り気のある土壌を好む木だと言われます。これは身近に自生している様子から来ているのではないかと思います。アカマツは山の尾根筋でや海岸沿いなどの乾燥した砂質土壌で目立ち、モミジ類は谷間の渓流近くでよく目にします。これを見るとよく言われる通りの性質に思えます。

 しかし目にする機会は少ないでがアカマツは他の木が生えにくいような湿地にも生えています。モミジも崖の上に生えている事もあります。岩石土壌と強風で背の低いマツと草ばかりの山頂上付近で、背を低く傘のような樹形で葉を密に茂らせて風に耐えているモミジの仲間が点在しているのを見た ときには驚きました。雑木類が多い当事務所の圃場で実験してもモミジ類は最も乾燥に強い部類です。 

 

山頂付近でのハウチワカエデ

 ここからわかるのはマツは乾燥にも過湿にも強い、つまり他の木が育たないような過酷な環境に耐える事ができる性質があるということです。植物が自生分布する環境は「生態的最適域」と言われますが、マツは乾燥と過湿の両極に分布しています。一方で実際の分布とは関係なくその植物が最も健康に生育する環境を「生理的最適域」と言います。実はマツの生理的最適域は乾燥した土ではなく「適度に湿った水はけの良い土壌」です。この生理的最適域はマツだけでなくほとんどの植物に共通します。

 植物には生理的特徴として「生存可能範囲が広い(過酷な環境に耐えられる)ほど生存競争力が弱い」傾向があります。マツは日当たりが良い場所でしか成長できないため、他の木が生えて日光を遮られると消えていったしまいます。マツは「どんな土でも生きていける」代わりに「土壌の良い場所では他の木に追い出される」ため、自然界では乾燥地や湿地といった「僻地」に分布しているのであって、好んでそこに生えているのではないようです。雑草もマツと似たような性質があります

 モミジはどうでしょうか。湿った渓流沿いにも乾燥して日当たりの良い崖地にも生えて丈夫そうに見えますが、街では傷んでいる姿をよく目にします。土壌湿度では対照的な環境の渓流沿いと崖地ですが、「地中に新鮮な空気が運ばれてくる」という共通点があります。ここからモミジの生育には地中の通気環境が重要な条件だとわかります。

■植物生理を庭の手入れに生かす

枯れ姿が美しいものを切らずに残すことで冬も楽しむことができる。

 落ち葉や雑草を取り除く日本式の庭やコンクリートに「密閉」された住宅地では土が締まって通気が悪くなってきます。庭でモミジが弱ってしまった場合、原因として「土壌の酸欠」は大いに考えらます。その場合は施肥や水やりを増やすのは逆効果で、周囲に通気穴を設けるなどの地中の環境を整える処置が必要になります。造園やガーデニングは植物を健康に育てることが目的です。植物生理を知ることは「なぜその手入れをするのか」を知ることになり、細かな知識をたくさん覚えていなくてもどうすれば良いかが見えてきます。剪定や雑草や病虫害の対処に生かすこともできます。

 

 

 

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